第86回 堅田智子さんインタビュー『アレクサンダー・フォン・シーボルトと明治日本の広報外交』

思文閣出版 2023年



今回は2023年に思文閣出版より出版された『アレクサンダー・フォン・シーボルトと明治日本の広報外交』の著者である堅田智子さんにお話を伺いました。インタビュアーは久野譲太郎さんです。

【著作概要】青木周蔵、伊藤博文、井上馨、井上勝之助。彼ら親独派のかたわらには「もう一人のシーボルト」がいた。
明治政府に外交官として約40年間奉職したアレクサンダー・フォン・シーボルトが外交官人生を賭して取り組んだのは広報外交だった。高い先見性をもち、「〈視覚〉による広報」と「〈文字〉による広報」が両翼をなすシーボルトの広報外交戦略では、ウィーン万博を成功に導き、条約改正や黄禍論との戦いに挑んだ。広報外交を通じ、シーボルトが母国ドイツに発信した明治日本の姿(イメージ)とは、いかなるものだったのか。
本書では、「日本帝国近代史の化身」と表された外交官人生と明治日本にもたらされた広報外交の裏面史を明らかにした。明治日本の「ドイツ化」や「独日関係の黄金時代」の一例としての意義も問うた。
本書はシーボルトに関する世界初の体系的な学術書である。執筆にあたり、マルチリンガル、マルチアーカイヴァル的手法を用い、日独双方に所蔵される外交文書、日記、書簡、ブランデンシュタイン=ツェッペリン家所蔵資料、シーボルト自身が執筆した論文・新聞記事を分析した。


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【ゲスト:堅田智子 プロフィール】

1987年生まれ、東京都出身。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了、博士(史学)。関西学院大学教育学部助教。専門は、19世紀から20世紀の世紀転換期における日独関係史、アレクサンダー・フォン・シーボルト研究、広報文化外交。 「アレクサンダー・フォン・シーボルトと黄禍論」(『上智史学』第57号、2012年)により、第6回石橋湛山新人賞受賞。「シーボルト兄弟にとってのウィーン〜日独澳関係史、広報文化外交史の交点として」(『異文化を伝えた人々Ⅱ)「ウィーン万国博覧会後のジャポニスムをめぐって〜『日本古美術展』とシーボルト兄弟寄贈日本コレクション」(『1873年ウィーン万国博覧会』思文閣出版、2022年)「青木周蔵とアレクサンダー・フォン・シーボルト〜『国家を診る医者』を目指した二人の外交官」(『プロイセン気質の日本人』久米美術館、2022年)など。


【インタビュアー:久野譲太郎 プロフィール】

愛知県出身。同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士後期課程修了、博士(文化史学)。同志社大学文学部嘱託講師、ハイデルベルク大学客員研究員。専門は、大正・昭和戦前期を中心とした近代日本の思想史。 『恒藤恭の平和主義とナショナリズム〜「世界民」と民族』(晃洋書房、2023年)、「『総力戦体制』下の恒藤法理学〜「統制経済法」理論をめぐって」(『ヒストリア』第231号、2012年)、「恒藤法理学における『新カント派』受容の理路〜『法の理念』をめぐって」(『政治思想研究』第24号、2024年)、『ヴァイマール期ハイデルベルク大学の日本人留学生〜在籍者名簿および現存資料目録』(科学研究費研究報告書、2022年)など。