今回は2023年にCambridge University Pressより出版された『Science for Governing Japan’s Population』の著者である保明綾さんにお話を伺いました。インタビュアーは藤本大士さんです。
【著作概要】現在の日本は「2040年問題」等の言葉にもあるように「人口危機」に晒されていると言われており、政府はこれら人口問題に関し何らかの措置を施すことを期待されている。しかし、そもそも「人口」がなぜ「危機」として捉えられるようになったのだろうか。また、なぜ政府に人口危機を解決することを求めるのだろうか。
本書は、明治期以降に新たに出現した「人口」という概念をめぐる科学と国家の営みを歴史的に検証し、「人口」を科学する学術領域の形成と明治期から近代統治国家として日本が変貌することは共生関係にあったことを示す。さらに、その共生関係がうまれる過程で、「人口」が国家の管理の対象となった結果、現在の人口をめぐる言説が当然のこととして人々に受け入れられていると論じる。
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【ゲスト:保明綾 プロフィール】
2003年マンチェスター大学科学技術史・医学史研究所(Centre for the History of Science, Technology and Medicine)博士課程修了(科学技術史・医学史)、Ph.D。2004〜2008年、同研究所でポスト・ドクター・リサーチフェロー、2008〜2009年、ケンブリッジ大学・ニーダム研究所でリサーチ・アンド・ティーチング・フェロー、2009〜2015年、マンチェスター大学でウェルカム財団ユニバーシティ・アワード研究員を経た後、現在、マンチェスター大学人文言語文化学科(School of Arts, Languages and Cultures)で講師を務める。2023年3月現在、立命館大学で客員研究員。専門は近代日本医学史・科学史で、主に生殖や人口をめぐる政策や力学の社会史を研究。主要著書に、今回紹介したScience for Governing Japan’s Population (Cambridge: Cambridge University Press, 2023)。
【インタビュアー:藤本大士 プロフィール】
2010年、早稲田大学人間科学部卒業(科学史・科学論)。2019年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(科学史・科学哲学)、博士(学術)。現在、日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:京都大学大学院教育学研究科)。専門は近代日本医学史。主要著作に『医学とキリスト教:日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』(法政大学出版局、2021年)。