今回は2023年に晃洋書房より出版された『愛されるコモンズをつくる〜街場の建築家たちの挑戦』の著者である松村淳さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【著作概要】本書は、コロナ禍によって人々が住宅の内と外の双方に居場所を失っているという状況を契機に、現代日本における身体と空間を問い直すことを目的とした。その際、排除/包摂という議論ではなく、「疎外」という視角から光を当てた。そうすることで、排除/包摂論からは見えてこない、人々と居場所の多様な状況を検討していくことが目的である。
公園や図書館等の公共空間は、リスク回避のために禁止事項が増え、気軽に利用することが難しくなっている。そうした公共空間の機能不全は、人々を住宅の中へと撤退させてしまう(住宅への疎外)。一方で、日本における住宅の大部分を占めるnLDKタイプの画一化された住宅は、自宅でのテレワーク、感染者の隔離といったコロナ禍による非常事態に対応できず、人々は住宅からも疎外されている。
このような状況にあって、「私的な空間へのコモンズ的な要素の埋め込み」という試みが各地で看取できる。こうした私的空間を公的にアップデートすることでコモンズをつくるというボトムアップ型の展開は、機能不全を起こしている公共空間としての機能を代替し、さらに、その限界が顕在化しつつある住宅の機能も補完していく契機を含むものである。
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【ゲスト:松村淳 プロフィール】
関西学院大学・同志社大学非常勤講師。立命館大学客員研究員。神戸市地域協働局アドバイザー。1973年香川県生まれ。関西学院大学社会学部・京都造形芸術大学通信教育部建築デザインコース卒業。設計事務所勤務を経て、関西学院大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(社会学)、二級建築士、専門社会調査士。
専攻は労働社会学・都市社会学。現在、建築を社会学的に問うための視角としての建築社会学を構想中。2021年からは神戸市の山間部の休耕田を借りて里山環境の再生に資する農業を学生たちと実践中である。
【インタビュアー:松田ヒロ子 プロフィール】
ブック・ラウンジ・アカデミア事務局。神戸学院大学教員。
学歴・経歴の詳細→https://researchmap.jp/hirokomatsuda