自由・平等・植民地性

台北・国立台湾大学出版中心 2015年



台湾の近代的教育制度は、いかなる歴史的条件に規定され、「植民地性」を帯びたものとして形成されるに至ったのか。本書では、台湾が日本の植民地となった1890年代に日本「内地」の教育界で議論されていた、教育の「自由と平等」、「国家と地域」をめぐる議論に注目し、1890年代における「内地」日本と「外地」台湾の双方における教育制度形成の展開過程について検討する。そのうえで、台湾の教育制度がさまざまな時代要因のなかで、結果として「植民地性」を付与されるに至るプロセスを、具体的・実証的な視点から明らかにする。


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【ゲスト:山本和行 プロフィール】

天理大学在学中に台湾へ留学し、台湾の友人たちと交流を深めるなかで日本と台湾の歴史的な接点に興味を持ち、旅行会社などに就職後、あらためて大学時代の興味関心を深めたいと思い、京都大学大学院教育学研究科に進学し、日本による台湾の植民地統治、およびそこで形成・展開される教育制度の形成・展開過程を研究テーマに選びました。 ここでインタビューしていただいた本を出版してからは、植民地期の学校教員の歴史的位置や、教員を取りまく社会的状況、あるいは現代的な課題として、今の台湾の学校に残されている植民地統治期の学校関連資料の所在などに関心を持っています。 また、教職課程の教員として天理大学に職を得てからは、教員養成をめぐる歴史的・社会的な課題や、歴史的な視点から考える大学教育の方向性、あるいはICTを活用した授業方法の検討などにも関心を持つようになりました。


【インタビュアー:冨田哲 プロフィール】

広島大学教育学部で日本語教育を専攻し、卒業後、ニュージーランドの大学で日本語を教えました。首相在任中の出産やCOVID-19対策でよく話題になるニュージーランド首相(2020年現在)のジャシンダ・アーダーンは、私が教壇に立ったワイカト大学の卒業生ですが、残念ながら同時期にキャンパスにいたわけではありません。 その後、名古屋大学大学院国際開発研究科に進み、まず社会言語学、さらに日本統治期から今日にいたるまでの台湾のエスニシティや言語状況に関心を持ちました。博士論文では、日本統治初期の日本語教育(台湾人対象)と台湾の言語の教育(日本人対象)の研究にとりくみました。修了後、2000年から台湾北部の淡江大学日本語学科で教えています。 もっか日本統治期台湾の税関、在台湾の韓国華僑、1960-70年代の台湾映画などが研究テーマです。淡江大学では、学部で日本語や日本近現代史、修士課程で日本統治期や台日関係にかかわる科目を担当しています。