第70回 山口航さんインタビュー『冷戦終焉期の日米関係〜分化する総合安全保障』

吉川弘文館 2023年



今回は2023年に吉川弘文館より出版された『冷戦終焉期の日米関係〜分化する総合安全保障』の筆者である山口航さんにお話を伺いました。インタビュアーは渡邊康宏さんです。

【著作概要】1970年代末から80 年代にかけて、大平、鈴木、中曽根の三政権は、「総合安全保障」を掲げ続けた。新冷戦から冷戦の終焉へと国際情勢は変容し、米国でも民主党のカーターから共和党のレーガンへと政権が交代し、日米関係のあり方にも変化が見られた。そうであるにもかかわらず、なぜ総合安全保障という概念は引き継がれていったのか。これが本書の問いである。

本書は、総合安全保障論を「多様性」と「多層性」の2つの観点からとらえ直す。総合安全保障に関する先行研究は、主として安全保障の構成要素の多様性に注目し、多層性の観点は重視されない傾向がある。そこで本書は、「広義の安全保障」たる経済安全保障や食糧安全保障などの「多様性」に加え、同盟関係のレベルや国際環境のレベルから「多層的」に安全保障を捉える視角を提示する。

総合安全保障という用語は今日まで継承されている。本書が示す「多様性」と「多層性」の議論は、冷戦終焉期の日米関係を明らかにするだけでなく、今日における日本の外交・安全保障政策を考えるうえでも重要な視座を提供している。


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【ゲスト:山口航 プロフィール】

神戸市生まれ。同志社大学法学部3年次退学(飛び級で同大学院入学)。同大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(政治学)。スタンフォード大学客員研究員、同志社大学アメリカ研究所助教などを経て、現在、帝京大学法学部専任講師。専門は日米関係史、安全保障論、国際政治学。著書に今回ご紹介した『冷戦終焉期の日米関係〜分化する総合安全保障』(吉川弘文館、2023年、猪木正道賞正賞受賞)など。


【インタビュアー:渡邊康宏 プロフィール】

東京工業大学社会・環境理工学院博士後期課程在籍。