第71回 大久保由理さんインタビュー『「大東亜共栄圏」における南方国策移民〜「南方雄飛」のゆくえ』

晃洋書房 2023年



今回は2023年に晃洋書房より出版された『「大東亜共栄圏」における南方国策移民〜「南方雄飛」のゆくえ』の筆者である大久保由理さんにお話を伺いました。インタビュアーは安岡健一さんです。

【著作概要】「大東亜共栄圏」を建設する使命を担った青年たちは、どのように養成され、現地でどのような現実に直面したのだろうか。この問いのもと、本書は1940年代に拓務省によって実施された南方移民政策に着目した最初の本格的研究である。
その政策の特徴は、10代の青年たちを「大東亜共栄圏」における模範民族としてふさわしい人格と、「南方開拓」のための実践的知識を持つ人材として訓練した点にあり、彼らは卒業後に東南アジア各地へ送出された。
本書では彼らを「南方国策移民」と定義し、拓務省管轄下にあった人材養成機関である、「拓南塾」(企業社員養成)と「拓南錬成所」(農業技術者養成)を取り上げた。また現地での活動として拓南塾卒業生のうちフィリピンへ送出された事例に焦点を当て、日記や書簡の分析や、国内外での聞き取り調査によってその実相に迫った。なお補論では、拓南錬成所卒業生のグアムでの活動が、現地社会ではどのように記憶されているかについても論じている。
このように本書は、南方国策移民を政策・教育・活動という三つの側面から再構成し、「大東亜共栄圏」の内実について「下から」の視点から迫ることを試みる。


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【ゲスト:大久保由理 プロフィール】

1972年福岡県生まれ。専門は日本近現代史、民衆史、思想史。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程後期単位取得退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(PD)、日本女子大学人間社会学部助教を経て、現在は東京大学大学院経済学研究科附属日本経済国際共同研究センター特任研究員。主な論文に「移民史研究におけるジェンダー:南方国策移民を軸として」(鳴子博子編著『ジェンダー・暴力・権力』(晃洋書房、2020)など。戦争、ジェンダー、植民地の問題に関心があり、特に日本帝国における「南方・南洋」、つまり東南アジア・旧南洋群島のほか、近年は台湾・沖縄にも関心を拡げ、民衆の視点から帝国の問題を考えている。


【インタビュアー:安岡健一 プロフィール】

大阪大学大学院人文学研究科 現代日本学研究室 准教授。1979年生まれ、京都大学博士(農学)。日本学術振興会特別研究員、飯田市歴史研究所研究員を経て、2015年より大阪大学にて勤務。専門は日本近現代史。主な著書に『「他者」たちの農業史』(京都大学学術出版会、2014)。監修に『コロナ禍の声を聞く〜大学生とオーラルヒストリーの出会い』(大阪大学出版会、2023)。近現代の地域社会の歴史と、オーラルヒストリーという方法に関心がある。