『多様な子どもの近代』著者 元森絵里子さんインタビュー

稼ぐ・貰われる・消費する年少者たち

青弓社 2021年



今回は青弓社より『多様な子どもの近代〜稼ぐ・貰われる・消費する年少者たち』を出版された元森絵里子さんにお越しいただき、ご自身の著作についてお話しいただきました。インタビュアーは坪井瞳さんです。

【著作概要】
フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』は、子どもを保護し教育すべきと見なす感覚が歴史的なものだと明らかにした。戦前期日本の年少者の生とそれを取り巻く言説や制度を掘り起こし、「誕生」という単純な図式では捉えられない、多様な子どもの近代に光を当てる


【著者:元森絵里子 プロフィール】

明治学院大学社会学部教授。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。歴史社会学、子ども社会学。著書に『「子ども」語りの社会学』(勁草書房、2009年)、『語られない「子ども」の近代』(勁草書房、2009年)、共編著に『子どもへの視角』(新曜社、2020年)、訳書にアラン・プラウト『これからの子ども社会学』(新曜社、2017年)など。


【インタビュアー:坪井瞳 プロフィール】

東京成徳大学子ども学部准教授。大妻女子大学大学院家政学研究科博士後期課程単位取得退学。幼児教育学、子ども社会学、教育社会学。共著に『保育・幼児教育・子ども家庭福祉辞典』(ミネルヴァ書房、2021年)、『児童相談所の役割と課題』(東京大学出版会、2020年)、『子どもへの視角』(新曜社、2020年)、『子どもの生活を支える家庭支援論』(ミネルヴァ書房、2014年)、など。

『アラブ近代思想家の専制批判』著者 岡崎弘樹さんインタビュー

オリエンタリズムと〈裏返しのオリエンタリズム〉の間

東京大学出版会 2021年



今回は東京大学出版会より『アラブ近代思想家の専制批判』を出版された岡崎弘樹さんにお越しいただき、ご自身の著作についてお話しいただきました。インタビュアーは鶴見太郎さんです。

【著作概要】
アラブ・イスラームにおける専制主義をめぐってナフダ(復興)第二世代と呼ばれる思想家たちは,近代を模索するアラブ世界をいかにとらえていたのか。自由や民主主義を希求し,現在にも連なる開かれた知を求める思想の展開を明らかにする。


【著者:岡崎弘樹 プロフィール】

1975年生まれ。専門は、アラブ近代政治思想、および現代シリア文化研究。2003年から2009年にかけて仏研究所研究員や日本大使館の政務アタッシェとしてダマスカスに滞在。元政治囚の作家たちと付き合う中で、彼らの生命力と知的誠実さに感銘するとともに、19世紀以来のアラブ人思想家による自己批判の精神史の解明を志す。2016年にパリ第3大学アラブ研究科で社会学博士号を取得。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)、京都大学や大阪大学ほかで非常勤講師。著書に『アラブ近代思想家の専制批判―オリエンタリズムと〈裏返しのオリエンタリズム〉の間』(東京大学出版会、2021)、伊藤邦武ほか編集『世界哲学史VI 近代① 啓蒙と人間感情論』(第8章「イスラームの啓蒙思想」を分担執筆、筑摩書房、2020)。訳書にヤシーン・ハージュ・サーレハ著『シリア獄中獄外』(みすず書房、2020)など。


【インタビュアー:鶴見太郎 プロフィール】

1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術) 専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書:『ロシア・シオニズムの想像力:ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源:ロシア・ユダヤ人がつくった国』(講談社、2020年)

『戦没者遺骨収集と戦後日本』著者 浜井和史さんインタビュー

吉川弘文館 2021年



アジア・太平洋戦争における海外戦没者約240万人のうち、100万を超える遺骨が今なお現地に残る。戦後の日本は、海外戦没者の処理問題に真摯に向き合ってきたといえるのか。「遺骨収集事業」をめぐる諸外国との交渉や政策決定過程、国内の議論を分析し、歴史的に考察。靖国問題にとどまらない戦没者と国家の関係をめぐる研究に新たな視座を示す。


【著者:浜井和史 プロフィール】

1975年、北海道函館市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程指導認定退学。博士(文学)。外務省外交史料館『日本外交文書』編纂室勤務を経て、現在、帝京大学共通教育センター准教授。専門は日本近現代史、日本外交史。主要著書に『戦没者遺骨収集と戦後日本』(吉川弘文館、2021年)、『海外戦没者の戦後史―遺骨帰還と慰霊』(吉川弘文館、2014年)、編著に『復員関係史料集成』全12巻(ゆまに書房、2009-2010年)など。


【インタビュアー:松田ヒロ子 プロフィール】

神戸学院大学現代社会学部・准教授。オーストラリア国立大学Ph.D 経歴、業績の詳細はhttps://researchmap.jp/hirokomatsuda

『関係人口の社会学〜人口減少時代の地域再生』著者 田中輝美さんインタビュー

人口減少時代の地域再生

大阪大学出版会 2021年



住む人が減ったら、地域は再生できないのか? 関係人口を社会学の見地から定義し、その役割を論じた本邦初の「関係人口の研究書」。各地の事例と新たな理論の枠組みによって関係人口を位置づけ直し、人口減少時代の地域再生の方向性を示す。

「関係人口」とは、「定住人口」(移住)でもなく、「交流人口」(観光)でもない特定の地域に様々なかたちで関わる人々を指す語で、地域社会の課題解決につながる新たな地域外の主体として近年脚光を浴びている。本書では、関係人口という新たな主体の存在と、関係人口が地域の再生に果たす役割を明らかにすることで、これからの人口減少時代における地域再生の在り方と、再生に向けた具体的な方法論を示す。新型コロナウイルスの影響を踏まえて今後の地域と関係人口を検討する補論も付している。


【著者:田中輝美 プロフィール】

島根県浜田市生まれ。大阪大学文学部卒。山陰中央新報社記者として、琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海−竹島と尖閣」で2013年新聞協会賞を受賞。2014年、同社を退職し、フリーのローカルジャーナリストとして、変わらず島根に暮らしながら、地域のニュースを記録している。主な著書に『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』(2017年、木楽舎)、『ローカル鉄道という希望―新しい地域再生、はじまる』(2016年、河出書房新社)など。2018年度総務省ふるさとづくり大賞奨励賞受賞。2020年、大阪大学大学院人間科学研究科後期課程修了。博士(人間科学)。2021年4月、島根県立大学地域政策学部准教授に着任。また、過疎の発祥地から「過疎は終わった! 」と問い、百年続けることを掲げる新しいかたちの年刊誌『みんなでつくる中国山地』も仲間と創刊した。


【インタビュアー:佐藤達郎 プロフィール】

多摩美術大学教授(広告論 / マーケティング論 / メディア論)、コミュニケーション・ラボ代表。学会活動として、日本広告学会常任理事、日本広報学会理事、日本マーケティング学会ブランドマネージャー制度研究会リーダー、WOMJ(クチコミ・マーケティング協議会)理事<前理事長>等を努める。ビジネスの世界では、小田急エージェンシー社外アドバイザー、古河電池社外取締役など。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DY→2011年4月より現職。著書に『「これからの広告」の教科書』、『自分を広告する技術』、『教えて!カンヌ国際広告祭』等がある。

『誰の日本時代〜ジェンダー・階層・帝国の台湾史』著者 洪郁如さんインタビュー

ジェンダー・階層・帝国の台湾史

法政大学出版局 2021年



「日本時代」とは何か。印象論的な「親日台湾」を乗り越え、台湾のいまを知るためには、とりわけ日本が深く関わった時代に正面から向き合う作業が避けて通れない。植民地統治は、当時の台湾の人々の生活とその戦後をどのように規定していったのか。本書は語られなかった、書かれなかった日本時代にフォーカスし、個人史と家族史を中心に新たな視座を提供する。


【著者:洪郁如 プロフィール】

台湾彰化県生まれ。台湾大学法学院政治学系卒業,東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了,博士(学術)。現在,一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は近現代台湾史。日本台湾修学旅行支援研究者ネットワーク(SNET台湾)共同代表。

主要業績:著書に『近代台湾女性史―日本の植民統治と「新女性」の誕生』勁草書房,2001年。編著に『性別與権力』国立台湾大学出版中心,2020年。論文に「フェミニズム運動,政党,キャンパス――近現代台湾政治と女性」『言語文化』(52),2015年,「植民地台湾の〈モダンガール〉現象とファッションの政治化」タニ・バーロウ/伊藤るり/坂元ひろ子編『モダンガールと植民地的近代――東アジアにおける帝国・資本・ジェンダー』岩波書店,2010年,「女子高等教育の植民地的展開――私立台北女子高等学院を中心に」香川せつ子/河村貞枝編『女性と高等教育――機会拡張と社会的相克』昭和堂,2008年など。


【インタビュアー:赤松美和子 プロフィール】

大妻女子大学比較文化学部准教授。2008年、お茶の水女子大学人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人文科学)。専門は台湾文学。日本台湾修学旅行支援研究者ネットワーク(SNET台湾)共同代表。主要著作に『台湾文学と文学キャンプー読者と作家のインタラクティブな創造空間』(東方書店、2012年)、赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)など。

『暴力の経験史〜第一次世界大戦後ドイツの義勇軍経験 1918〜1923』著者 今井宏昌さんインタビュー

第一次世界大戦後ドイツの義勇軍経験 1918〜1923

法律文化社 2016年



暴力の経験は「政治の野蛮化」にどのような影響を及ぼすのか。義勇軍という同じ経験をもちながら、その後はナチ、共和派、コミュニストと別々の政治的道程を歩んだ3名を検討対象に、彼らの経験がもつ歴史的意味を問う。
※博士論文「第一次世界大戦後ドイツにおける義勇軍経験の史的分析」(東京大学、2016年) に若干の加筆・修正を加えたもの


【著者:今井宏昌 プロフィール】

1987年大分県日田市生まれ。福岡大学卒業、福岡大学大学院博士課程前期修了、東京大学大学院博士課程修了。日本学術振興会特別研究員DC2(2012〜2013年度)ならびにPD(九州大学大学院比較社会文化研究院・2014〜2016年度)を歴任したのち、現在、九州大学大学院人文科学研究院歴史学部門西洋史学講座講師。今回紹介した単著以外の主な業績として、『教育が開く新しい歴史学(史学会125 周年リレーシンポジウム 2014〈1〉)』(共著、山川出版社、2015 年)、J・ハーフ『ナチのプロパガンダとアラブ世界』(共訳、岩波書店、2013 年)、T・キューネ/B・ツィーマン編『軍事史とは何か』(共訳、原書房、2017年)、A・ヴィルシング/B・コーラー/U・ヴィルヘルム編『ナチズムは再来するのか?:民主主義をめぐるヴァイマル共和国の教訓』(共訳、慶應義塾大学出版会、2019年)がある。


【インタビュアー:鶴見太郎 プロフィール】

1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術)
専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書:『ロシア・シオニズムの想像力:ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源:ロシア・ユダヤ人がつくった国』(講談社、2020年)

『ピアノの日本史〜楽器産業と消費者の形成』著者 田中智晃さんインタビュー

楽器産業と消費者の形成

名古屋大学出版会 2021年



富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした原動力を経営学・マーケティングの観点から明らかにした。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムを分析し、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描いた。


【著者:田中智晃 プロフィール】

東京大学大学院経済学研究科博士課程を満期退学後、同大学特任研究員を経て、2011年に東京経済大学経営学部専任講師に着任。現在、同大学准教授。2018年に東京大学より経済学博士号を取得。ピアノをはじめとする楽器産業の歴史や流通、マーケティングに関心がある。これまで楽器小売店の伊藤楽器(千葉県)、三木楽器(大阪府)、電子楽器メーカーのコルグ(東京都)の社史を執筆し、その過程で得た内部資料を基に論文を執筆してきた。2020年には一般社団法人全国楽器協会の依頼を受け、日本の楽器市場規模に関する大規模な統計調査を行った。趣味でヤマハのシンセサイザー(DX-7、EOS)を愛用。学生時代はヤマハ音楽教室でフルートを習っていた。


【インタビュアー:吉原真里 プロフィール】

ハワイ大学アメリカ研究学部教授。東京大学教養学部教養学科卒業後、米国ブラウン大学にてアメリカ研究修士号・博士号取得。専門はアメリカ文化史、アメリカ=アジア関係史、ジェンダー研究、カルチュラル・スタディーズなど。著書にDearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Maestro (Oxford, 2019), 『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか? 人種・ジェンダー・文化資本』(アルテスパブリッシング、2013)『ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール 市民が育む芸術イヴェント』(アルテスパブリッシング、2010)『ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書 2008)など。

『鄭清文とその時代〜郷土を愛したある台湾作家の生涯と台湾アイデンティティの変容』著者 松崎寛子さんインタビュー

郷土を愛したある台湾作家の生涯と台湾アイデンティティの変容

東方書店 2020年



日本統治時代に生まれ、終戦・旧国民党独裁時代・民主化と進む激動の戦後台湾を生きた作家鄭清文。2017年に逝去すると当時の台湾文化部部長であった鄭麗君は彼を悼んで「国宝」級作家と称えた。彼の作品は台湾の「国文」教科書にも掲載され、台湾の若者の間で知名度が高い彼の作品の多くは日本統治時代や都市と地方の関係、環境問題などに触れる。そして彼の作品の主要登場人物はスティグマ――一般と異なることから差別を受けがちな属性――を持つ。本書では彼が登場人物にスティグマを持たせた理由や彼の生い立ちなどを通じて、彼の作品に込められた心や寓意を読み解く。


【著者:松崎寛子 プロフィール】

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国学部中国語専攻卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は台湾文学、華語文学、台湾児童文学、台湾における国語教育、日台比較文学など。国立台湾大学台湾文学研究所交換留学、ハーバード大学イェンチン研究所訪問研究員・カリフォルニア大学サンタバーバラ校台湾研究センターポスドク研究員を経て、現在日本学術振興会特別研究員、日本大学特別研究員。華語圏、日本、英語圏で台湾文学がどのように研究されているかの比較もしています。

著書に『鄭清文とその時代:郷土を愛したある台湾作家の生涯と台湾アイデンティティの変容』 (東方書店、2020年)、『越境する中国文学』(共著、東方書店、2018年)、《동아시아의 일본어 문학과 집단의 기억, 개인의 기억》 (共著、역락、2018)。論考に“Dis-/Re-Connecting Japan to Taiwan: The Complex Feelings of Different Japanese Generations toward Taiwan in Yoshida Shūichi’s Road”, Electric Journal of Contemporary Japanese Studies (2018年12月)など。 現在二児育児中。


【インタビュアー:明田川聡士 プロフィール】

1981年、千葉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は台湾文学・台湾映画。大学院在籍中の2011年に国立台湾大学台湾文学研究所に交換留学。留学直後に東日本大震災を経験し、それを機に台湾人による対日感情の歴史的変遷にも関心を寄せるようになりました。現在、獨協大学国際教養学部専任講師。同学部中国研究科目群の教員として、台湾文学・台湾映画などの授業を担当しています。

著書に『戦後台湾の文学と歴史・社会』(単著、関西学院大学出版会、2021年12月予定)、『越境する中国文学』(共著、東方書店、2018年)、『台湾研究新視界』(共著、台北・麦田出版、2012年)。翻訳に黄崇凱『冥王星より遠いところ』(単訳、書肆侃侃房、2021年9月)、李喬『藍彩霞の春』(単訳、未知谷、2018年)、李喬『曠野にひとり』(共訳、研文出版、2014年)。論考に「台湾文学と台湾ニューシネマ」『ユリイカ』(単著、2021年8月)など。

『共同体なき社会の韻律〜中国南京市郊外農村における「非境界的集合」の民族誌』著者 川瀬由高さんインタビュー

中国南京市郊外農村における「非境界的集合」の民族誌

弘文堂 2019年



ふらりと集まり、すっと立ち去る。明確な境界を有する「コミュニティ」の発想では捉えきれない、中国農村社会で見られる何気ない交流のしくみを描いた民族誌。


【著者:川瀬由高 プロフィール】

1986年北海道生まれ。専門は社会人類学、中国民族誌学。北海道大学(文学部)卒業。首都大学東京大学院(人文科学研究科)博士前期課程を経て、同大学院(人文科学研究科)博士後期課程満期退学。博士(社会人類学)。日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)を経て、現在、江戸川大学(社会学部)専任講師。


【インタビュアー:川口幸大 プロフィール】

東北大学大学院文学研究科・文学部 教授 (広域文化学専攻 域際文化学講座 文化人類学分野)。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。 国立民族学博物館機関研究員を経て、2010年より現職。研究分野は東アジア、特に中国における家族親族、宗教、移動など。

『ナショナリズムの空間〜イスラエルにおける死者の記念と表象』著者 今野泰三さんインタビュー

イスラエルにおける死者の記念と表象

春風社 2021年



本書は、パレスチナに入植したシオニスト達が、どのように自らの歴史的正統性と政治的権利を主張する手段としてユダヤ人/教徒の死者とその死を利用し、パレスチナの景観の改変を行ってきたかを明らかにした研究書である。

特に、本書では、シオニスト入植者達がパレスチナ各地に建設した記念碑や記念空間に注目し、「ユダヤ民族」とその「祖国」というシオニズムのイデオロギーの創造と維持のための手段として死/死者が利用され、「新しいユダヤ人」の創造と祖国の回復というシオニズムのナラティブを正統化する役割が死/死者に与えられてきたことを明らかにしている。さらに本書からは、イスラエル建国以降、世俗的要素が強かった死者を記念するナラティブや儀式が次第に宗教的要素と融合され、民族と国家が神と結び付けられ、神聖化されていった過程をも知ることができる。

本書後半は、イスラエルが1967年戦争においてヨルダン川西岸地区等を占領し、入植地を建設していった過程とその政治的背景を考察する。さらに、シオニズム運動とユダヤ教を同一視する民族宗教派と呼ばれるユダヤ系イスラエル人達が、どのようにシオニズム運動内の独自組織として登場し、イスラエルのナショナリズムにおける世俗的性格と宗教的要素の融合状態を一層強めながら、ヨルダン川西岸地区等の占領地でのイスラエル人入植地建設の先頭に立ってきたかを明らかにする。そして、フィールドワークの成果に基づき、これら民族宗教派の入植者たちが、占領地で殺された仲間や親族とその死について、贖いのプロセスの前進を証明し、新たな生命と建設に繋がるものとして、さらに、生者に新たな力を与え、アラブ人の「残虐性」や「反ユダヤ主義」を証明するものとして語り、記念し、入植地建設を進めるための政治的手段として利用してきたと論じる。

イスラエル人入植者の殺害現場に作られた記念碑(2010年2月24日今野泰三さん撮影)
殺害されたイスラエル人入植者を記念して建設されたユダヤ教神学校(2010年2月24日今野泰三さん撮影)


【著者:今野泰三 プロフィール】

1980年、東京都生まれ。大阪市立大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。日本国際ボランティアセンター(JVC)パレスチナ事業現地代表等を経て、現在、中京大学教養教育研究院准教授。専門は、中東地域研究、平和学、政治地理学。パレスチナ/イスラエルにおいて、植民地主義と宗教とナショナリズムがいかに相互作用しながら、民族意識や社会経済構造を作ってきたかということに関心がある。主な著作に、『ナショナリズムの空間――イスラエルにおける死者の記念と表象』(春風社、2021)、「宗教的シオニズムの構造的基盤に関する歴史的考察――ハ・ミズラヒとハ・ポエル・ハ・ミズラヒの多元的・状況対応的性格――」(『ユダヤ・イスラエル研究』第34号、2021年)がある。


【インタビュアー:松田ヒロ子 プロフィール】

神戸学院大学准教授。PhD(History, オーストラリア国立大学) 学歴・経歴の詳細→https://researchmap.jp/hirokomatsuda